飯田橋は曇り
3件の精神科に当日の診療を断られて、「泣くと息が苦しい!」と思いながら、4件目の「少々お待ち下さいね」の保留音を聞いていた。
自分の名前だって住所だってうまく言えずにえぐついてる自分は本当に東京で7年間も一人暮らしをしている大人なんだろうか、と思えば思うほど涙が止まらなかった。
ついに来てしまった、病気になってしまったんだという小さく濃い不安。これでやっと楽になれるんじゃないかという淡い安堵感。
やけに静かな待合室ではそんなものに浸っていた。
駅を出てから道に迷ったので、すこし汗をかいていた。ティーシャツをパタパタ扇ぐ。
待合室には、スーツを着た男性とピンクのスエットを着た40代くらいの女性がいた。悲しい様子も落ち着かない様子もないが、つま先のちょっと先を見つめて俯いていた。何かを探してるような感じだった。
見えぬ。ああ何も見えない。
今も今日も明日も自分も、何も見えない。
元気な時は、なーんにも見えないけどなんか楽しいからオッケー!なのに、今は何も見えてない自分が怖くて哀れで生きる価値なんかないと思える。
ちなみに普通の時は、見えてないことに気づかない。